はばたんの愉快な日常

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【サントラレビュー】「青天を衝け」サウンドトラックⅠ

こんばんは、はばたんです!

今回は2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」、3/24発売のサウンドトラック第1弾を入手しましたので早速レビューしたいと思います!

 

「青天を衝け」は今年の2月から放送開始されたNHK大河ドラマ第60作目の作品。主人公の渋沢栄一吉沢亮さんが演じております。

今年の音楽担当は佐藤直紀さん。大河ドラマでは2010年放送の「龍馬伝」以来の2回目の登板です。佐藤さんといえば「Always 三丁目の夕日」をはじめとした胸を打つメロディメーカーで誰もが必ず佐藤さんの作品を耳にしたことがあるでしょう。

(はばたんは2006年のドラマ「トップキャスター」の音楽でお名前を知りました。当時サントラ発売されたら即買いしたのは懐かしい思い出。。)

 

今回の「青天を衝け」は幕末以降の日本が舞台ですので、以前佐藤さんが作曲されていた「龍馬伝」と時代設定は同じといえますが、果たして佐藤さんはどのような差別化をされるのか音楽担当発表の時からとても気になっていました。それでは、早速レビューをしていきたいと思います!!

※番組や佐藤さんとは全く関係ない1ファンの感想なので、実は的外れなレビューになっていればご容赦ください…!

 

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1. 青天を衝け

今回の大河ドラマのメインテーマ。遅めのテンポのためか、演奏時間は例年に比べて(収録時間ベースで)10秒くらい長い。文明開化を知らせるような鳥の鳴き声(を模したフルート)が聞こえると弦楽器によるゆったりとしたテーマが流れる。少しずつ高揚していった先に管楽器によるファンファーレが高らかにならされるが、これは栄一が幕府や明治政府の要職に就き活躍していく場面だろうか。ファンファーレは潮が引くように静かになり冒頭のテーマに回帰し、優しく終わる。「龍馬伝」では使命感に燃えて短命ながらも生き切った龍馬の一生をエネルギッシュなテーマで表現していたが、「青天を衝け」では一転して包容力のある優しいテーマを提示することで渋沢栄一が幕府や政府にかかわり今の世の中につながる社会の基盤を築いた様を描き出しているように聞こえた。

中間部のファンファーレのところが、第2話で栄一たちが子供→大人キャストに切り替わるところで効果的に使われていましたね。

 

2. 青天の志

放送前の予告篇でも使われた曲、はばたんは最初こちらがメインテーマだと本放送を見るまでずっと思いこんでいたレベルで佐藤さんお得意の人を鼓舞するメロディが炸裂している。メインテーマを「静」とすると、こちらはまごうことなく「動」のテーマ。

弦楽器のみで演奏されている曲ながら、空間の広さと理想に向けて疾走する人々の姿が浮かぶような素晴らしい楽曲。弦楽器が上昇音形と下降音形を同時に奏でているのですが、これがまるで光が散乱し青空が生まれる過程の様。

この曲は第1話で七郎麿(後の徳川慶喜)が騎乗で登場するシーンでお披露目されましたね。

 

3. 血洗島の三人衆

瑞々しい雰囲気の楽曲。ハープの音色と小さくパーカッションがリズムを刻む中、フルートを中心とした管楽器がメロディを奏でる。弦楽器の細かなパッセージは何かが生まれて蠢くようだが、まるで武州血洗島に生まれた栄一たちが少しずつ身の回りの世界に対してアプローチしていくかのよう。

 

4. 学問の世界

ピアノのパッセージで始まるこの曲、合間のパーカッションと木琴の音があたかも水中に気泡が出てくるかの様=学問という広い海で栄一たちが学びを始めるといろいろな興味が気泡のごとく湧いて出てくるイメージが浮かんだ。

 

5. 渋沢の藍玉

夕暮れを思わせるような弦楽器のアンサンブル。フルートの音が少し暑さが和らいでくるのを知らせる風のように聞こえる。和太鼓の音も聞こえるが、これはきっと近くの寺で夕刻を知らせるために鳴らす太鼓の音だろう。

 

6. 終の将

「終の将」とは言うまでもなく徳川幕府最後の将軍となった徳川慶喜のことをさしているのであろう。(もっとも就任時に幕府最後の将軍となるとは予想もしてなかったであろうが)。欧米列強が日本へのアプローチを強める時代の転換期において幕政の舵取りが非常に難しくなる、そんな世情で悩みもがく人々の姿がこの曲を聴いてよぎった。

 

7. 家康の部屋

本作で狂言回しの立ち位置にあたるのが北大路欣也さん演じる初代将軍・徳川家康

時代を超えて子孫を見守る彼の名前が使われた本曲は、和楽器にピアノ(凄く面白い組み合わせだ!)がまじりあって始まる、あたかもタイムマシーンに乗って時空を旅するかのような一曲。

 

8. 誓い

大地を思わせるような滔々たる旋律。タイトルからは誰のどのような誓いなのかは明示されていないが、変革の時代にあたって理想を新たにする人たちを見守る自然を音にするとこういった優しさになるのではと感じた。

 

9. 烈公

烈公とは水戸藩藩主の水戸斉昭のこと。(演じるは竹中直人さん。肖像画にとても良く似ていらっしゃる)。斉昭が怒った際に一歩ずつ踏みしめながら近づいてくるかのような描写、尺八は彼の怒気による体温の上昇が湯気のように出てくる如く後半部分を吹ききっている。

 

10. 友

「友」というタイトルとは裏腹にとても切ない楽曲。これは幕末の動乱に関わるにつれて立場が変わり訣別せざるをえなくなったかつての友への感情の発露であろうか。

 

11. 家族

叙情的なバンドネオンが響く一曲。家族、というタイトルは今そこにいる家族というよりも栄一が過去を回想して子供時代に家族と経験した色々な出来事に思いを馳せているかのような郷愁を感じる。

 

12. 藍色の手

「藍色の手」というタイトルとこの曲を聴いて農民たちが日々の成果を素朴に喜ぶ成果が脳裏に浮かんだ。不作やお代官の無茶ぶりに耐えながら自分たちの畑を守り、そして無事に藍を収穫する、という変わらない毎年の喜びを噛み締める姿。

 

13. 目利きの小僧

幼いながらに商才を発揮する栄一、のテーマとでも言おうか。躍動的なピチカートにギターが合いの手を入れる、少しはらはらする落ち着きのなさをはらみつつも、どこに向かっていくか気になってしまう曲だ。

 

14. 困惑

何か悪い胸騒ぎがして心臓の鼓動が高鳴ってしまう。冒頭のパーカッションや三味線はその嫌な皆騒ぎとそれを否定して冷静でいたい思考の駆け巡りの印象ではないかと思う。途中から出てくるヴァイオリンのトリルを伴う動きは、その胸騒ぎを補強する事実をどんどん明るみに出し、やがて嫌な"胸騒ぎ"は確信へと変わってしまうのだ。

 

15. 十字架

十字架というとキリスト教的なものがどうしてもイメージにでてしまうけれど、この曲の重々しい曲調を踏まえると一生抱えていかなければいけない苦しみを背負うということを表現したかったのだろうかと感じる。「青天を衝け」で扱う時代を鑑みると、戊辰戦争やそれに前後して発生する各地での武力闘争の果てに、人の生死を目の当たりにしても進んでいかなければならない当時の人々の行き場のない感情が奔出しているかのよう。どうすることもできない諦念が低弦楽器で冒頭から曲を支配しているが、一方で救いを求める悲鳴がバイオリンで時折表現される。

 

16. 黎明の光

高弦楽器が冒頭から奏でる音形はあたかも光が降ってくるかの様。ただしそれは必ずしも暖かな前向きなものかどうかはわからない。中間部の管楽器は不確実な時代ゆえの厳しさを示し、明確な答えがない中で光に従って自らが信じる方向に進めと幕末の志士たちに伝えるような印象だ。

 

17. あいの家族

"あい"は"愛"であり"藍"なんだろう。第1話で幼いころのわんぱくな栄一が家の一角で眠りこけてしまったように、暖かい昼下がりに家の一角で収穫された藍やお蚕様を見守りながらのんびりすごし、あるいはドラマのように眠りこけてしまう、そんな穏やかなひと時を想像した。

 

18. このくにのゆくすえ

朝靄のような低減の序奏の後に、トランペットがメロディを奏でるがまるで朝に太陽の光が一筋差し込むかのよう。"このくにのゆくすえ"というタイトルになっているが、まさしく混沌とした時代に希望の光が差してくる光景が目に浮かぶ。

 

19. 青天を衝け 紀行Ⅰ

大河ドラマでおなじみの紀行の音楽、毎年色々な楽器やアーティストがこのコーナーで演奏しているが今年の1曲目は三浦一馬さんによるバンドネオンでの演奏。メインテーマのエッセンスが凝縮されており、オーケストラによる演奏とはまた違ってどこか郷愁も感じられるような響きが感じられる。

( バンドネオンってこれまでの大河ドラマの紀行で取り扱われたことあるのだろうか、初めてな気がする…)

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以上、ど素人による楽曲レビューでした!改めて「龍馬伝」と全く異なる幕末の音楽世界を展開してきた佐藤さんの凄さを思い知りました。(佐藤さんがが作曲した際のイメージ知りたいなあ)

完全な妄想全開ですが、「青天を衝け」やそのサウンドトラックに興味を持ってもらうきっかけになれば幸いです。